産業雇用安定助成金
新型コロナウィルス感染症流行の影響により、昨年大注目されたのは皆様もご存じの「雇用調整助成金」。昨年は、国も、企業がコロナの影響で仕事のない社員を解雇しないようにと、支払った休業手当の全額を補填するという特例を設けて支給してきましたが、その”特例”の雇用調整助成金も今年の4月末をもっていったん終了(緊急事態宣言が発出されている地域については継続しています。詳細は別投稿で。)。現在の新型コロナウィルス感染症の流行状況を考えると、国も、いつまでも、”休業手当の全額、一部を補填するから解雇するな”では、この先、もたない…ということに気づいた訳です。
そこで、”休業よりも(在籍)出向”方針へ転換され、この4月に登場したのが、今回ご紹介する「産業雇用安定助成金」です。これは、コロナの影響で事業を縮小せざるをえなかった企業(出向元)と人手不足で困っている企業(出向先)にも支給されるという、1つで2社に支給されるという今までにはなかった全く新しいタイプの助成金です。
産業雇用安定助成金の概要
今までにはないタイプの助成金であるがゆえに、この助成金の対象となる出向の条件は、細かく定められており、例えば…
・新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図ることを目的に行う出向であること
・出向期間終了後は元の事業所に戻って働くことを前提としていること
・出向元と出向先が、親会社と子会社の間の出向でないことや代表取締役が同一人物である企業間の出向でないことなど、資本的、経済的・組織的関連性などからみて独立性が認められること
・出向先で別の人を離職させるなど、玉突き出向を行っていないこと
・出向協定を締結していること
・出向社員の同意を得ていること
などが挙げられています。詳細は厚生労働省の専用ページを確認いただけたらと思いますが、定められている要件を出向元と出向先の企業がもれなくクリアできてはじめて助成されるものです。ですので、出向元の企業はOKだったけど、出向先の企業がNG、または出向先企業がOKで出向元がNG
だったら、いずれの企業も助成金を受給できません。
受給できる額って?
受給できるものは、下記の出向運営経費と出向初期経費の2つです。
○出向運営経費
出向元事業主及び出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費など、出向中に要する経費の一部を助成します。
中小企業 | 中小企業以外 | |
出向元が労働者の解雇などを行っていない場合 | 9/10 | 3/4 |
出向元が労働者の解雇などを行っている場合 | 4/5 | 2/3 |
上限額(出向元・出向先の合計) | 12,000円/日 |
○出向初期経費
就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備などの出向の成立に要する措置を行った場合に助成します。
出向元 | 出向先 | |
助成額 | 各10万円/1人当たり(定額) | |
加算額(※) | 各5万円/1人当たり(定額) |
※出向元事業主が雇用過剰業種の企業や生産量要件が一定程度悪化した企業である場合、出向先事業主が労働者を異業種から受け入れる場合について、助成額の加算を行います。 出典:厚生労働省
1つの助成金で出向元、出向先の2社に支給するという新しいタイプの助成金ですから、今までの助成金とは異なる調整や準備が必要です。ですが、コロナが収束した後の事業を考えると、経験やスキルを持っている社員は在籍しておいてほしいもの。かと言って、休業のまま抱え続けるのは資金繰り的にに厳しい…。ここでいう在籍型出向というスタイルが活用できれば、この2つの問題を解消することが可能です。しかも、社員は別の企業での勤務経験は知識や経験を確実の重ねることができますから、出向終了後の活躍も期待できます。ハードルは消して低くありませんが、当事務所が全力でお手伝いしますので、お気軽にご相談ください。